イヴ

今年も寒々とした気分になれる日が来た。今更この日に私に何らかの心温まるイベントがあるとは期待しないが、楽しげな人達を眺めてゐると少し殺意が湧いたりもする。
流石にこの日は皆残業を早めに切り上げ、帰る人が多い。いや、別のところでよろしくやつてをられるのかもしれないが。私も残業を8時頃で切り上げ、職場の方から拝領した名刺を手に、一人呑みに出かけた。…新宿二丁目に。無論この日がさういふ場所に足を踏み入れた最初の日だ。
店に足を踏み入れると、初老の男性と中年男性が一人。「ママ(おい)」と従業員。…客は私一人だと? 泣きたくなる気持ちを抑へ、カウンター隅の椅子(端から一つ手前)に腰掛ける。その後一時間程二対一のお話。呑まなきややつてゐられないが、呑み過ぎると貞操が危ふい。危険な綱渡りをしつつ11時頃に切り上げ、千鳥足で帰宅。ケーキを買つて帰り、一人で散らかし放題の自室で食へば、今年「も」痛いイヴとして完璧だつたが、購入できず。そのことに敗北感を覚えてゐる自分に鬱になる。