平壤クーデター作戦 静かなる朝のために(佐藤大輔著 徳間書店刊 ISBN:4198506000)

…書き下ろし書いてる暇があるなら「地球連邦の興亡」「遥かなる星」「侵攻作戦パシフィック・ストーム」等の続きを書けと思ふのは私だけではあるまい。
「東京の優しい掟」で活躍した浅岡ニ佐が登場。といふか佐藤氏の作品では同じ人物を使ひ回すやうだが。登場人物はやはりひねてゐる。防衛庁情報本部長のオバハン(矢上)とのやりとりから一部引用してみる。この場面には他に広瀬彩香一等陸尉が同席してゐる。


矢上はあからさまな嘲笑を浮かべた。
「われわれにとってのドラえもんは違うわ」
「はぁ」
「またの名をアメリカ合衆国、というのよ」
余りにも唐突に矢上は甲高く情けない声でつづけた。
ドラえもんなんとかしてよぉ、また北朝鮮がミサイルをちらつかせてるよぉ」
上官には常に従わねばならない。浅岡は地獄の底から響くように低い声でつぶやいた。
「はい、ステルス爆撃機ぃ。のびた君、この爆撃機はね、レーダーに気づかれずによその国を叩きつぶすことができるんだ」
日本国軍事情報機関のトップと、おおいに問題があるその部下はともに驚いたような顔をつくって見つめあった。そして、なんとも恥ずかしげな溜息を同時に吐いた。彩香は真剣に転職先を考えながらおもった。あたし、しずかちゃんの役をしなくて良かったのかしら。
かういふノリが好きな人には堪らないかと。あと害務省云々についてもソヴィエト崩壊時に隠れ共産主義者が6名をり、彼らがモスクワに情報を流してゐたとの聞き捨てならない発言がある。無論著者は小説の内容は架空のものと断つてゐるけれども。
…さうだね、害務省に隠れ共産主義者が6名ゐたなんて嘘つぱちだよね。今までのヘタレぶりを見る限り、
そんなに少ない筈がないから。
ついでに今もゐるんでない? 余所の国に必要「以上」に情報を流してゐるの。故意か過失かさておいて。