望んだ道と痛む手首。

就職して間もない頃、届け物の途中に派手に転倒した際に左手首を痛めたが放置し、今も時折痛む。手元不如意だつたとは当時の言い訳。
今にして思へば、金銭云々より、そりの合はぬ上司に頭を下げて勤務時間中に治療に行くのが嫌だつたのだらう。嫌味を聞かされるくらゐならと、痛みと付き合ふことを選んだ結果、今呻吟してゐる。
「人は望まぬ道はけして歩かない」 いい言葉だ。周囲や状況のせゐにして自分の無能や怯懦から目を背けたくはないものだ。
と、言ひながら手首が痛むたびにかつての上司を思ひ出す私は人間の出来が悪いのだらう。