昔話をしようか。

昔々あるところで、総理大臣直属の暗殺者が悪党を殺しまくる漫画が、とある雑誌で連載されてをりました。
あるとき、その漫画に反日主義が高じて大企業のビルに爆弾を仕掛け、何の関係もない通行人を殺傷した、テロリストと呼ぶのもをこがましい思想犯気取りの刑事犯をモチーフにした回がありました。
それを目にした彼らの支持者は怒りました。正義のためにアジアの人民を搾取する日本の資本主義者相手に「たたかった」彼らを悪役にするとは何事かと。
出版社の人も漫画の作者もオトナですから、守るものがあります。「だつたら一般市民を殺傷せずに政治家や財界人、高級官僚とか殺すなりすれば良かつたぢやないか」とか大人気ないことは言わずに、単行本出版の際にはその回を削ることを約束しました。
かうして東アジアで反日で、狼だか大地の牙だかの人の「人権」は守られましたとさ。めでたし、めでたし。


と過去を蒸し返す趣味のある私には、


「本宮さんも編集部も政治的意図は一切ない。南京事件は作品の完成度を高めるためには避けて通れないものだった。デリケートな問題という認識はあったので、本宮さんと編集部が慎重に検証しながら漫画化した。しかし検証に反省すべき点があった」
との集英社の言ひ訳(産経新聞の記事による)は信用できない。いや、確かに「政治的意図は一切」なかつただろう。「ボクたち社会派でちゅよね〜」程度の意識だつたことは想像に難くない。
だから私は「集英社本宮ひろ志反日だ、けしからん」といふ向きにも、「集英社本宮ひろ志GJ」といふ向きにも同調できさうにない。ただ、「集英社は過去もやらかしたし今回もまたやらかした、となれば将来もまたやらかすだらう」と思ふだけだ。
諦観と侮蔑を抱きながら。