かくすれば かくなることと知りながら

押すなよと言ふ上島竜兵
例のプールの話。さういへばこれに限らず事件事故の被害者の呼称について、
(昔)
男:「ちゃん」(幼児)「くん」(高校生くらゐまでの子供)「さん」(それ以降)
女:「ちゃん」(幼児〜中学生くらゐまで?)「さん」(それ以降)
(今)
男女とも年齢不問で「さん」
になつてゐるやうだが気のせゐか? またジェンダーフリーか! このバカチンどもが。






…本題に入らうか。


ふじみ野市のプールの事件にしても、なぜ監視員が排水口の前に立つとかしなかったのか、

本当に理解に苦しむ…。

単に死者が小学生から高校生になるだけみたいですよ?
さて。このプールの管理を請け負つた会社だが指名競争入札で選定され、そこから業務を丸投げされた会社も入札参加業者だつたさうな。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060801it13.htm
先日一般競争入札だつたら市の責任はないんでないのと書いたが、指名競争入札なら話は全く違つてくることになる。この二業者が指名競争に参加できたといふことは、すなはち市がプールの適正な管理運営ができると認めたからに他ならない。であるのに請負業者の太陽管財は契約に違反して丸投げ、丸投げされた業者である京明プランニングの管理はいい加減、両者ともとても契約を結ぶ資格があつたとは思へない。市の責任はそれなりに重いといはざるを得ない。
で、バイトの監視員は蓋を渡されても何かわからなかつたといふ。
http://www.asahi.com/national/update/0801/TKY200608010541.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060802i204.htm
プールの中に落ちてゐたといふ蓋にさう種類があるとも思へない。そもそも蓋といふのは開口部を塞ぐためにあるものあり、塞ぐのはさうしないと都合の悪い事情があるからに他ならない。吸水口の蓋が取れてれば何か大きいものが吸ひ込まれかねないと考へることも、その「もの」が人間だつた場合大変なことになることも、常人の思考能力で充分に辿りつける筈である。考へが及ばなかつたといふより考へもしなかつたといふのが正解だらう。 
だが、だがである。そもそも人はそれほど「考へて」行動してゐるだらうか。何か失敗をしでかしたときに「少し考へればわかる筈のこと」を見落としたことに愕然としたことはないだらうか。普段から「人並みに」注意を払つて思慮深く行動してゐる人間がどれほどゐるだらう。私はそれほどゐないと踏んでゐるのだが。「後悔先に立たず」とは良く言つたものである。
作家大石英司氏のブログのコメント欄で興味深いコメントを見つけた。強調部分は引用者による。

>業務委託と供に責任も丸投げ

現在の職場環境は、いうなればお猿の電車と
一緒です。猿は言われるまま運転席に乗っかているだけ。経営者は猿にいざというときのスキルを求めていないし。そもそも猿はいざというときの首切り要員なわけで訓練しても時間と金の無駄な訳です。
常になにもかもがうまくいってトラブルが全く無いということを前提にコストを計算しているんだからスキルの無いお猿を乗っけておけばいいという結論になりますな。
実際こういうのは増えてますよ。

病巣は実にここにあるのではなからうか。都合の悪いことは見ないやうにする。あたかも平原で猛獣を見つけ、その危険を見ないやうに頭を地面に突つ込むことで安心するダチョウのやうに*1。都合の悪いことを見なくて済むのかといへば、済むのである。自分がそれに直面しなければ、だが。世の中は悲観論者がいふよりずつと都合が良く出来てゐる。

まあ今回の件について、利口な奴はたんと反省してみるがいいぢやないか*2。私はしないけど。過去にも類似の痛ましい事件が何度も起きたし、その反省は結局生かされず今回も起きた。であるならば将来も起きるに違ひあるまいとは、それこそ「人並み」の思考能力があれば予測できることだらうから。


長々と書きすぎた。この少女の死が生かされることはないだらうといふ結論では事実であるにしろ救ひがないので別の話題でしめることにしたい。
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/kanagawa/news/20060802ddlk14040194000c.html


埼玉県ふじみ野市で起きた流水プール死亡事故を受け、松沢成文知事は1日、3日に県立辻堂海浜公園藤沢市)の流水プールを視察し、自ら水着に着替えて吸水口の安全点検をすると表明した。
神奈川県知事が女性でないことを神奈川県民と共に心から寿ぎたい。良かつたね。

*1:ダチョウの名誉のためにいつておくと、実際のダチョウはそんなことはしない。

*2:小林秀雄