昨夜は昨年分の源泉所得税の集計作業で終電まで残業だつた。疲れた体を引きずり家に着くと、水槽の照明が消えてゐる。はて家を出る時に点け忘れたのだらうかと訝りながら部屋の電灯の紐を引いたが点灯しない。ここでやうやくブレーカーが落ちてゐることに気付き、ブレーカーのスイッチを元に戻し給電を再開。
熱帯魚を飼育してゐる水槽の横にある水温計は10度と少しを指してゐた。いふまでもなく飼育に適した温度ではない。水槽の中を見ると底にはセウェルリア・リネオラータがひつくり返ってゐて、エアーポンプの排気口近くに浮いてゐるサカサナマズも微動だにしない。給電再開とともにヒーターも作動してゐるが、このまま水槽の魚は全滅かもしれないと暗澹とした気分で床についた。
翌朝水槽を眺めると、魚たちは息を吹き返した様子で、とりあへず一安心しつつ行きたくもない仕事に出かける。定時を少し過ぎた所で上がり、食事を済ませてから帰宅して水槽を覗きこむと、サカサナマズが一匹力なく水中を漂つてゐた。他のサカサナマズと異なり目が濁つてゐるので多分死んでゐるのだらう。明朝埋葬しようと思ふ。
冬場でヒーターが機能しなくなつたとはいへ、致命的なまでに水温が下がるにはそれなりに時間がかかつたことだらう。つまり私が終電まで残業などせねば、この小さな生命は失はれずに済んだ可能性がそれなりにある。
私は生涯所得税源泉徴収制度を許さないだらう。