本日の調達品。

岳飛伝 4 日暈の章

岳飛伝 4 日暈の章



想いの軌跡―1975‐2012

想いの軌跡―1975‐2012

今となつては叶はぬ夢物語だが、私はこの人に防衛大の校長になつてほしかつた。
五百旗頭某より余程適役だつたと思ふ。


考える生き方

考える生き方

「人生の基調低音は不幸である」とは曾野綾子の弁だつたと思ふ。そして福田恆存は「幸福論とは不幸に耐へる術」のことだと『私の幸福論』で述べてゐた(はづ)。福田和也「大先生」も『価値ある人生のために―若き友への手紙』で何事かを語つてゐた。この本もさういふ、「自分の人生との折り合ひのつけ方」の系譜に位置するのだらうか。
文章は大変読みやすい。これだけ平易に書ける人が極東ブログなどで韜晦芸をしばしばやるのはどうにも私の理解の及ばないところがあるが、まあ人の趣味にケチつけるのもあれだ。でもこの本も韜晦芸全開だつたら駅の近くのドブ川におほきく振りかぶつて投げ捨てるつもりだつたことは正直に告白しておく。
内容は所謂自分語り。自分の経験と引き合はせて同意するところもあれば意見を異にするところもあるが、自分語りといふものに往々にしてつきまとふ不快さを感じさせないのは大した筆力だと思ふ。
正直若い人向けにも見えないし、著者と同年代以上で人生の締め括り方を具体的に考へるやうな人向けでもないと思ふが、三十代半ば〜五十前あたりの、大体自分の「この先」が見えて来て、日々に少し疲れを感じてゐる人々にはおすすめしたい。Twitterだとところどころのお役立ち知識に感心してゐる人が見受けられたが、さういふ読み方よりも市井の一私人の人生といふものの滋味をまるごと味はふつもりで読むのが乙であらうと私は思つた。