木久蔵ラーメンを求め

代々木にやつてきた。実のところ木久蔵ラーメンを食べるのは初めてではない。ただ、前回は満腹状態だつた上、店には完全に出来上がつた常連と思しき酔つ払ひがくだを巻いてゐるといふアグレッシヴな状況だつたため、評価の公正さに疑念があつた。そのためまたやつてきた。
代々木で下車し、店に向かふ。かつてJR大阪駅から出るのに1時間しかかからなかつた*1私の方向感覚を以てすれば、店を見つけることなど容易いことであつた。階段を下り店に入る。
ほぼ満席。少なからず驚きながら、客の間に一つ空いたスツールに腰掛け、「木久ちゃんラーメン(醤油)」と焼き餃子を注文。待つてゐる間、観照の徒として店内をヲチ。
ほとんどの客が常連のやうだ。何だか客の一人が持つて来た南瓜を天麩羅にするらしい。別の客はけふが25歳の誕生日とかで乾杯をしてゐる。私の近眼でもいいとこ倍にしか見えないのだが。
ラーメンが来た。やはりドンブリの中の卵が1/4といふのは私の理解を越えてゐる。半分にしたところでコスト増は高が知れてゐるので、何かのポリシーとしか思へない。
しばしラーメンをすする。左隣の客が勘定を済ませて去つた後、南瓜を持つてきたらしい客が、天麩羅の大きさをママに任せられたらしく、自分で切つてゐた。手つきが危なつかしくて仕方ないんですが。
南瓜をスライスした後、彼は含羞を帯びた笑顔で私に詫び、席に戻つた。とりあへず何もかも水に流し、餃子を食べることにする。
勘定を済ませて外に出て、人工の光で汚された夜空を見上げて思ふ。
歌丸師匠は正しかつた」と。

*1:そしてそこから徒歩5分のホテルまで2時間しかかからなかつた