重い話。

母から残業中に電話が。仕事中だと知つて帰宅後に掛け直してこいと言はれるも、わざわざそんなことをいつてくる時点で妙なので掻ひ摘んで事情を聞いた。…聞くんぢやなかつた。

私は今まで立身出世と縁のない道を歩いて来た。別に私がさういふことに興味がない、ひとかどの男だつたからではない。むしろ逆で、ひとかどの男でないことを自覚するが故の保身に過ぎない。誰に誇れる生き方でもないが、人に好意的な評価を恵んで貰ふ贅沢は随分昔に諦めた。その筈だつた。
この夜だけはそんな自分の来し方を恥ぢた。