面影。

定時すぐに上がり中央線に乗車。人身事故の影響で遅れが出てゐるらしい。苛々しながら待つ。
数メートル先に見覚えのある顔を見たやうな気がして思はず目をこらす。別人だつた。当たり前だ、その男、即ち我が友Gは既に故人なのだから。
数年前王子駅の階段にて同様の経験があつた。そのときは反射的に手を伸ばし声をかける寸前だつた。あのとき感じた痛みは今はない。
時の流れは残酷だ。それとも単に私が薄情なだけなのか。