目の前で

乗客の腰から背中にかけてわさわさと撫でさすつてゐる手がある。
ジェンダーフリーだかジェンダーレスだかに欠片も理解を示すつもりがない私は「よそでやれ」と意思を込めつつ生暖かい目で眺めるが止める様子はない。目は口ほどにものを言ふといふのは嘘つぱちのやうだ。
新大塚で降りる客を通すために一時降車した際に彼らとは離れたのでその後どうなつたかは私の知るところではない。