退去。

昼近くにガスを止めるために蕨の元住居に舞ひ戻る。けふがゴミの日なので出しておいた毛布が粗大ゴミのシールを貼られて回収されてゐないことに唖然とする。仕方がないので粗大ゴミ回収券を入手しようと市役所やその支所を回るがどこも時間外とのことで売つてくれない。平日昼間にしか来れないのしか行政サービスの対象にしないなら駅前に支所とか置く必要あるのかねとは思ふ。無論職員の休日出勤手当以外の理由で。
万策尽きたので(といつても前述の通りなので「万策」といふのは修辞上の表現だが)隣家の婆様に後事を頼むことにした。最後の挨拶をした後で切り出すと快く請け合つてくれた。傘や物干し竿を譲つたり、洗濯物を干すスペースを日常的に貸したり、大家族故の喧噪に嫌な顔ひとつしなかつたりしたおかげで*1彼女の私に対する好感度はかなり高い。といふか私は大抵の人種において与へる第一印象が悪いのだが、中年以降のご婦人に対しては例外的にさほど悪くない。余り喜ばしいこととも思へないが、かういふときや職場のお局様相手にはありがたい特性ではある。
ガス代の精算を済ませ(思つてゐたより随分と高ついた。漏れてたりしたのだらうか)、大家のところに挨拶に行く。あちこち具合が悪くなつてゐるところを正直に話し(耐用年数が過ぎて壊れたり調子が悪くなつた設備について話したところで私に請求が来るわけではない)、対応を任せる。後に人が入るなら直せばいいし入らないなら放置で良からう。
大家は唐紙だけ取り替へるみたいなことを言つてゐたが畳も替へる必要があると思つたので敷金返還請求はしないことにした。まう少し綺麗に部屋を使つてゐたならばしたかもしれないが。一応は正当な権利なんだから行使してもいいかと思つたが、元々退去時の清掃費用を求められたときに相殺するつもりだつたので黙つてゐることにした。欲をかきすぎて藪蛇になるのは面白くない。
しかし本当に今日で最後なのだな。流石に多少の感慨はある。言葉にはならないが。

*1:とはいへ後二者は先方が気にしてゐただけで私はほとんど気にならなかつたのだが。